東京都港区三田の整体院サーヴィカルテのコラム

コラム

2021.06.09

「自律神経」を整える ― 自律神経を調整し、からだを改善する ―

医療のイメージ

みなさま、こんにちは。サーヴィカルテ院長のあかおぎです。
突然ですが、以下のサービスをご覧ください。

SNS
YouTube
スマホアプリゲーム
Netflixなどの動画配信サービス...

この中で、利用されているサービスはありますか。
またその利用時間は、1日何時間でしょうか。
もしかすると、1年で換算すると数日分になっていないでしょうか。

今の世の中は、多種多様なサービスにあふれています。過去にないくらいの加速度的スピードで科学が発展し、便利な世の中になってきました。かくいう私もその恩恵を受けて、こうしてコラムをネットにあげることができています。

パソコン、タブレット、スマートフォンを利用し、インターネットを活用できるのは、もはや必須スキルともなっています。

何が言いたいのかというと、それは、
「魅力的なサービスが生活に浸透し、いつしか夢中になり、知らず知らずのうちに生活リズムを崩しやすくなっている。」
ということです。

睡眠不足や不規則な食事時間など、生活習慣によって一度崩れた体内リズムはなかなか立て直すのが難しいといいます。

多くの方が、多忙な生活なストレスによって体調を崩したり、不調を感じているのではないでしょうか。

今回はそんな体内リズムに大きく関わる「自律神経」をテーマとしました。

そして、ここでは「より詳しく」、「できるかぎりわかりやすく」な情報をお伝えするため、できるだけ情報を集約した長文コラムのスタイルでお送りしていますす。

そのため、「知りたい情報を先に読みたい」という方は、目次をクリックしておすすみください。
順番はお気になさらず、ご興味のある項目を選んで読み進めてください。

このコラムをきっかけに、みなさんにとって健康で幸せな生活を送るための有用な情報にたどり着けることを願っています。

それでは、サーヴィカルテコラムにどうぞおつきあいください。

1.神経について

脳神経のイメージ

①神経とは

からだにある約60兆個の細胞を状況に応じてコントロールし、動かしているのが神経です。
神経は全身すみずみに通っていますが、その種類は大きく2つに分類されます。
それは、神経の中心である「中枢神経」と、体中に張り巡らされている「末梢神経」です。

神経の区分の表

人間の細胞は同じDNAを持ち、そして様々な機能を持った細胞に分かれています。その中でも、情報伝達・処理に特化した細胞を「神経細胞(ニューロン)」といいます。

末梢神経系は、1000億個以上の神経細胞(ニューロン)が、全身に糸のように張り巡らされています。脳や体の他の部位とつながっており、多くの場合は神経同士もつながっています。

ニューロンは大きく分けて、「細胞体・樹状突起・軸索」の3つからなります。 また、ニューロンの先に「シナプス」というものがあり、このシナプスが他のニューロンに接続されます。

◯神経細胞(ニューロン)のイメージ図

神経細胞(ニューロン)のイメージ図

【神経の情報伝達の流れ】
からだの外部から刺激を受ける。
→目・耳・皮膚などに関係する感覚の受容器が興奮し、電気信号を発信。
→電気信号が樹状突起から神経細胞体、軸索へと伝搬。
→信号が軸索の末端に到達すると、シナプス小胞という小さな袋から神経伝達物質(化学物質)を分泌。
→化学物質がシナプスの隙間に拡散して、次のニューロンの軸索や樹状突起にとりつき、信号を伝えていく。

②中枢神経

神経の中心は脳と脊髄にあり、ここを通る神経が「中枢神経」です。
中枢神経は、末梢神経から届く情報を受けて指令を発します。

神経走行のイメージ図

③末梢神経

末梢神経は、「④体性神経、⑤自律神経」の2つに分けられます。 また、体性神経には、脳神経と脊髄神経があります。 「脳神経から12対、脊髄神経から31対」が全身に伸びています。 脳と脊髄をからだの各部分につなぐのが「末梢神経」であり、手足の指の先までのびています。

【脳神経と脊髄神経の数】

・脳神経(12対)
・脊髄神経(31対)    頸神経(8対)
   胸神経(12対)
   腰神経(5対)
   仙骨神経(5対)
   尾骨神経(1対)

頭部の横断面イラスト(脳神経) /頭~ 首の矢状断面イラスト

【脳神経の種類と役割】

・嗅神経   嗅覚
・視神経   視覚
・動眼神経  眼球運動
・滑車神経  眼球運動
・三叉神経  顔面・鼻・口・歯の知覚、咀嚼運動
・外転神経  眼球運動
・顔面神経  表情筋の運動、舌前2/3の味覚、涙腺や唾液腺の分泌
・内耳神経  聴覚、平衡覚
(聴神経)
・舌咽神経  舌後1/3の知覚、味覚、唾液腺の分泌
・迷走神経  頭部や頸部、胸部、腹部(骨盤を除く)の内臓の知覚・運動・分泌
・副神経   胸鎖乳突筋・僧帽筋の運動
・舌下神経  舌筋の運動

【脊髄神経】

腰痛の方などは、「坐骨(ざこつ)神経痛」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
「脊髄神経」には、この「坐骨神経」をはじめ、肋間(ろっかん)神経、大腿神経などがあります。

④体性神経

末梢神経の分類の1つです。
意志によって体の各部を動かすのが「体性神経」です。体性神経は、脳神経と脊髄神経があります。また、機能的な区分けとしては、「感覚神経(求心性神経)」と「運動神経(遠心性神経)」とに分けられます。
感覚神経(知覚神経とも言われる)は皮膚を中心に、運動神経は筋肉を中心に分布しています。

体性神経

感覚神経は、感覚受容器(目、耳、鼻、口、皮膚など)から脳に情報を伝えます。 運動神経は、脳から各効果器(筋肉や腺など)へ情報を伝えます。
つまり、各々の神経は「情報を伝える方向が違う」ということが大きな特徴です。

⑤自律神経

末梢神経の分類の1つです。
意志に関係なく刺激に反応して身体の機能を調整するのが「自律神経」です。

例)
→暑い時に発汗作用で汗が出るのは無意識な体の調整機能である「自律神経」の働きです。
→汗をハンカチで拭うのは意識して身体を動かす「体性神経」です。

自律神経は全身に分布していて、血管、胃、腸管、肝臓、腎臓、膀胱、性器、肺、瞳孔、心臓、汗腺、唾液腺、消化腺などの内臓を支配しています。
また、下記のようなものをコントロールしています。

・呼吸
・血液循環
・血圧
・心拍数と脈拍数
・体温
・消化
・代謝(そのため体重に影響を与えます)
・水分と電解質(ナトリウムやカルシウムなど)のバランス
・体液(唾液、汗、涙)の分泌
・排泄(尿、便)
・生殖(性的反応)
・免疫

以上のような体内の機能のコントロールを行い、自分の意志とは無関係に24時間働き続けている神経です。
生命維持には欠かせない体の機能を無意識に(寝ている時でも)調整しています。
心臓もつねに動いてくれていますが、動いてほしいとお願いしているわけではないはずです。
(「お願いしているよ」という方は、私にこっそり教えてください。)

自律神経は相反する2つの働きである「交感神経」と「副交感神経」に分かれています。 この2つがバランスを取りながら体の状態を調節しているおかげで、健康を維持する(生きている)ことができます。

多くの臓器は、交感神経と副交感神経のどちらか一方によって主に制御されていますが、1つの臓器に対して両方がそれぞれ反対の作用を及ぼしている場合もあります。

【反射について】

反射とは、「無意識」に特定の筋肉などが動くことをいいます。

「通常の動作の場合」と「反射の場合」について

通常の動作は、上記の通り、感覚受容器(目、耳、鼻、口、皮膚など)で受けた刺激が、神経を介して大脳に伝わって情報処理され、大脳からの指令によって何らかの反応や行動を起こすというしくみになっています。

ところが、「反射」は脳を通さず、感覚受容器(目、耳、鼻、口、皮膚など)からの刺激が神経を介して、直接、効果器(筋肉や腺など)に作用を及ぼすもののことをいいます。意識せずとも、自然と体が動くのです。

【反射の種類】

反射には、大きく分けて「体性反射」と「自律神経反射」があります。
◯体性反射
・深部反射
  腱をたたいて手や足を跳ねさせる、腱反射です。
  例:伸張反射 (膝蓋腱反射:膝を叩くと、足が動く(上がる))

・表在反射
  皮膚や粘膜をひっかいて起こします。
  例:咽頭反射(喉の奥を突くとゲッ(オエッ)とはきそうになる)
    角膜反射(目の角膜に触れようとするとまばたきをする)

・病的反射
  正常の場合には見られない反射です。
  例:バビンスキー反射、把握反射

・屈曲反射
  皮膚や筋肉などが有害な刺激を受けると、刺激を受けた部位を刺激から遠ざけるように屈筋が収縮する反射です。
  例:・熱いものに触れると、手を引っ込める。

・姿勢反射
  姿勢を維持しようと無意識にコントロールする反射です。
  例:立ち直り反射(足を踏み出して転倒を防ぐ。)
    パラシュート反射(転びそうになると、手が出る)

・原始反射
  原始反射は乳児期早期にみられる反射で、随意運動が発達すると、だんだんと消えていきます。
  随意運動とは、自らの意思によって動かす運動をいいます。
  ちなみに、不随意運動は、自らが意図せず体が勝手に動いてしまう異常な運動を言います。

【原始反射の種類】

・歩行反射(自動歩行ともいわれます)
  新生児の両脇を持ち上げて立たせようとすると、左右の足を交互に出し歩こうとするような動作をします。

・モロー反射
  新生児の頭を正面に向けて少し起こし、急に頭を下げると、びっくりしたように両手を広げ、指も伸ばし開き、その後抱きつくような左右対称の動作をします。
  急な大きい音に対して反応することもあります。

・把握反射
  新生児の手のひらにものが触れると、無意識に握ろうとします。足の裏を圧迫すると足の指も同じような動きをします。

・哺乳反射(出生後すぐに母乳やミルクが飲めるのは、この哺乳反射のためです)
  ・探索反射  口の周辺を刺激すると、刺激のある方向へ顔を向けて口を開きます。乳さがし反射ともいわれます。
  ・捕捉反射  口にやわらかいものが触れると、唇と舌でとらえる動きがみられます。
  ・吸啜(きゅうてつ)反射  口で乳首や指をくわえると、舌をリズミカルに動かして吸う動きです。その後、嚥下反射によって、たまった乳汁を飲み込みます。

・緊張性頸反射
  上を向いた状態で寝ている赤ちゃんの頭部を一方に向けると、顔を向けた側の手足を伸ばして、反対側の手足を曲げます。

・バビンスキー反射(病的反射の確認にも使われます)
  足の裏の外側を、とがったものでかかとからつま先に向けて刺激すると、足の親指が外側に曲がり、ほかの指は扇のように広がります。

など

◯自律神経反射(内臓反射)

自律神経(交感神経や副交感神経)によって、血圧・脈拍・発汗に胃腸の運動などをコントロールしており全身の状態を保って生きていくのに必要な反射です。
例)
・頸動脈洞反射(喉元を圧迫すると脈がゆっくりとなり血圧が下がる)
・圧発汗反射(圧迫が加わると汗をかかなくなる)
・眼の瞳孔に入ってくる光の量を調整する反射(対光反射)
などがあります。

◯神経を遮断させる麻酔について 手術で麻酔を使った経験がある方もいらっしゃると思います。麻酔には、いくつか種類があります。 ・全身麻酔
  文字通り全身にかける麻酔で、手術の間は眠っている状態を保ちながら行われます。/   心筋以外の筋肉や呼吸も止まるため、気管にチューブを挿入し、呼吸管理を行います。
・局所麻酔
  注射で手術の痛みをとる麻酔です。

【局所麻酔の種類】

・伝達麻酔
 わきの下などで、神経の根元に直接注射する方法です。肘から先など限られた範囲の手術に用いられます。比較的短時間の手術に利用されます。

・脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)
 腰椎麻酔、下半身麻酔とも言われ、腰に注射をする麻酔です。虫垂炎(盲腸)など下腹部から足の手術に利用されます。

・硬膜外麻酔
 カテーテルという細い管から薬を持続的に投与できる方法です。
 手術後の痛みのコントロールもでき、全身麻酔と併用されることもあります。
 一般的な開腹手術や無痛分娩などに用いられます。手術以外では、帯状疱疹や癌性疼痛の緩和などにも利用されています。範囲を限定して麻酔をすることができます。 ・局所浸潤麻酔
 麻酔をかけたい所に直接注射する方法です。小範囲の浅い所の手術に用います。

⑥交感神経

 身体を活発に動かすときに働きます。機能を刺激(促進)する際に主に使われます。(主に日中)
 脊髄の両側に脊髄と並行して縦に走っており、内臓や分泌腺などの働きに関わっています。

⑦副交感神経

 身体を休める時に活発に働きます。機能を抑制する際に主に使われる。(主に夜間やリラックスしている時)  脳幹に中枢があり、脊髄の下の方の仙髄という所からも両側に伸びています。

自律神経のおもな働き

自律神経のおもな働き

2.自律神経失調症について

体調不良のイメージ

①自律神経失調症とは

「自律神経が失調した(バランスが崩れた)状態」というと覚えやすいと思います。
ストレスなどが原因で、自律神経である「交感神経と副交感神経」のバランスが崩れて起こる、様々な症状の「総称」です。

医学的に明確な定義はなく、また、特定の「疾患名(病名)」ではありません。/

自律神経失調症の問題は、

  • 検査の結果からは、症状の重さを説明できない場合がある
  • 検査してもはっきりした原因が見つからないことがある

という点です。
しかし、本当に自律神経が障害されて起きる場合もありますが、そう多くはなく、自律神経失調症と診断されても、対症的治療によって症状も軽快することが多いと言われています。

【自律神経失調症の4つのタイプ】

  • 本態性型自律神経失調症
  • 神経症型自律神経失調症
  • 心身症型自律神経失調症
  • 抑うつ型自律神経失調症

・本態性型自律神経失調症
原因:生まれつき自律神経の働きが乱れやすい。
特徴:低血圧、虚弱体質、体力に自信がない人。

・神経症型自律神経失調症
原因:心理的な問題による。
特徴:自分の体の不調に敏感な人、くよくよしがちな神経過敏の人に多い。

・心身症型自律神経失調症
原因:日常生活のストレスを無理に抑えることによる。
特徴:最も多く見られ、約半数がこのタイプ。現れる症状・重さは様々。

・抑うつ型自律神経失調症
原因:慢性的なストレスの蓄積などによるうつ反応。
特徴:几帳面で完璧主義の人に多い。まず、抗うつ気分を治療する。

【自律神経失調症かなと思ったら】

まずは医療機関を受診しましょう。自己判断せず、専門家の医師のもと、診断してもらうことが大切です。
自律神経失調症に似た症状を引き起こす病気かもしれません。そのため、他の重大な病気でないかを確認する意味も込めて医療機関へ行きましょう。
重大な病気でないと分かれば、安心につながり、症状が軽減することもあります。

【自律神経失調症と診断されたら】

自律神経失調症は治せる病気と言われています。
生活習慣の改善とストレスの軽減が必要と言われています。さらには、ストレスが完全になくなるということはないため、どのようにストレス管理をするか(向き合い方や発散方法など)が大切です。

認知行動療法(物事の考え方を変える)という非薬物療法もあります。これによって脳がストレスを感じにくくすることもできます。

痛みやその他症状もそうですが、自律神経失調症の症状も「からだからの限界のサイン」です。「休んだり、一度ご自身のからだと向き合うタイミングだった」と前向きにとらえていただければと思います。

現状の生活を続けることによって、より深刻な病気になるリスクもあります。ストレスによる精神的な負担が増せば、ヘルスケア(心の健康)が崩れ、うつ病やその他の不眠症などのリスクも高まります。

②原因

前述の、自律神経を構成している2つの神経、

  • 交感神経(身体を活発に動かすときに働く)
  • 副交感神経(身体を休めるときに働く)

この2つバランスが崩れ、自律神経が乱れることがありますが、原因はいったい何なのでしょうか。

実は、直接的な原因は特定しにくいですが、間接的には

「ストレスや生活習慣の乱れ」

の影響が大きいのです。

やはり、この2つがとても重要なのです。

【原因の分類】

◯一過性
・不規則な生活
・偏った食事
・慢性的な睡眠不足
・過労
・過度のストレス
(i) 精神的ストレス・・・人間関係や仕事のプレッシャー
(ii) 身体的ストレス・・・光、音、温度など

上記の生活習慣に関わるものは、気を付ける必要が他にもあります。それは生活習慣病です。2型糖尿病、肥満症、脂質異常症、高血圧などです。

◯何らかの身体疾患に随伴する場合

・更年期におけるホルモンの乱れ(更年期障害)
・先天的要因
・シャイ・ドレーガー症候群
・パーキンソン病
・レビー小体型認知症

◯うつ病や不安症の症状の一部として出現する場合

【ストレスについて】

みなさん、よく使われているコトバ「ストレス」ですが、実はみなさんが使用されている「ストレス」には別の意味も含まれています。ちなみに「ストレス」はもともと物理学の分野で使われていたものです。

「◯◯(例:毎日の掃除)って、ほんとストレスだよね。」

という場合の、ストレスは、下記のストレッサーのことを指します。

【ストレスに含まれる3つの意味】

・ストレッサー(ストレス要因)・・・ストレスを生じさせる外界からの刺激(仕事、家庭、人間関係や過去の出来事など。)
  物理的ストレッサー(暑さ、寒さ、騒音、混雑など)
  化学的ストレッサー(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)
  心理・社会的ストレッサー(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)(よく使われるストレスは、これに該当)

・ストレス反応・・・ストレッサーに対して、身体面、心理面、行動面に起こるいろいろな反応。

・ストレス耐性・・・ストレスに耐えられる力。ストレスに対する適応、対処でき、どの程度耐えられるかというレベル。

【ストレスとメンタルヘルス】

知らず知らずのうちにたまっていくのが上記のようなものです。特にストレスは自分の感じている以上に体に蓄積されている場合があります。

ある動物実験では、ストレスも適度であれば寿命にプラスに働くと言われていますが、過度になればそれは病気の原因となっていきます。

職場におけるメンタルヘルスケア(心の健康)においても、「ストレス」は重要なチェック項目です。

メンタルヘルス不調に関して、「精神的に弱い、怠けている、甘えている、少し休めば治る、復帰しても仕事は任せられない」などと、誤解をされていませんか。メンタルヘルス不調は、ストレス過多では誰でもなりうると言われ、こころの強さは関係ありません。

2015年12月に施行された「ストレスチェック制度」は、労働安全衛生法が改定され、労働者数50人以上の事業場では、事業者の義務となりました(50人未満の事業場は当分の間努力義務となっています)。

(厚生労働省HPからの抜粋)
「ストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的としたものです。」

つまり、
「事業者が主体となって、労働者のストレスをチェック&コントロールし、未然に不調を防ごう。(そして、分析して、労働環境の改善も行おう。)」ということです。

HPにあるポスターを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
ポスター「ストレスは見えません。チェックしましょう」(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html

ストレスチェックポスターのイメージ

個人でストレスチェックを体験したい場合は、厚生労働省のサイト「こころの耳」にあります、下記のストレスチェックをおすすめします。

「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
  [https://kokoro.mhlw.go.jp/]

・5分でできる 職場のストレスセルフチェック
[https://kokoro.mhlw.go.jp/check/index.html]

その他、同サイトには、「疲労蓄積度のチェック」、「セルフケアの学習ページ」、「疲れやストレスに向き合う方法の紹介」などのページもございます。

・疲労蓄積度セルフチェック
(自覚症状と勤務状況から、仕事による負担度を点数化し、判定されます。セルフチェック終了後には、診断結果とともに、疲労蓄積ケアのためのアドバイスも表示されます。)
[https://kokoro.mhlw.go.jp/fatigue-check/worker.html]

・eラーニングで学ぶ 15分でわかるセルフケア
(ストレスについて、ストレスとつき合う方法、メンタルヘルスケアが必要な理由など、様々な視点でセルフケアが学べます。)
[ https://kokoro.mhlw.go.jp/e-learning/selfcare/]

・POSITIVE SHARING 疲れやストレスと前向きにつきあうコツ
(ヨガ、ストレッチ、7名の著名人へのインタビュー、などがご覧になれます。)
[https://kokoro.mhlw.go.jp/ps/]

周りの方と話をしても解決しない場合や一人で抱え込んでしまっている場合などは、相談窓口をぜひご利用ください。

  • 職場の産業医や保健師など

  • 専門相談機関、相談窓口 (電話、SNS、メールによる相談もあります。また、医療機関検索や各種相談窓口の案内もあります。窓口の種類は、パワハラ・セクハラ、仕事、生活、DV・性暴力、など多数あります。)

    [https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/]

【メンタルヘルス不調の予防ポイント】

  • ストレスに気付く(日常から、ストレス度を自身で確認するようにしてみましょう。)
  • メンタルヘルスへの理解(敵を知ることも大切です。その上で、対策を取りましょう。)
  • 周りの人へ相談する(ため込まないこと、1人で悩まないことも大切です。)

③症状

自律神経の乱れから、不安・緊張が高まり、頭痛、肩こり、動悸、めまい、不眠など多くの症状が現れますが、個人差が大きくあります。臓器にも影響し、「神経性胃炎」、「過敏性腸症候群」、「過呼吸症候群」などが起こることがあります。

症状は、その人の弱い部分に現れやすく、体質的におなかが弱い人には腹痛や下痢など、肩がこりやすい人には肩こりなどが起きることがあります。複数の症状が現れたり、それが同時に重なることもあります。

【全身的症状】

だるい、眠れない、疲れが取れない、疲れやすい、朝起きるのがつらい、など。

【器官的症状】

頭痛、動悸や息切れ、めまい、のぼせ、立ちくらみ、下痢や便秘、冷え、耳鳴り、疲れ目、手足のしびれや痛み、射精不能、胃痛、肩こり、背痛、腰痛、など

【精神的症状】

情緒不安定、イライラや不安感、うつなどの症状、記憶力や集中力の低下、やる気が出ない、など

・自律神経失調症チェック(総合南東北病院HP) https://www.minamitohoku.or.jp/kenkokanri/201008/jiritsusinkei_sp.html

【ストレス関連疾患】

・胃潰瘍および十二指腸潰瘍
・潰瘍性大腸炎
・過敏性大腸炎
・神経性嘔吐
・本態性高血圧症
・神経性狭心症
・過呼吸症候群
・気管支喘息
・甲状腺機能亢進症
・神経性食欲不振症
・片頭痛
・筋緊張性頭痛
・書痙
・痙性斜傾
・関節リウマチ
・腰痛症
・頸肩腕症候群
・原発性緑内障
・メニエール症候群
・円形脱毛症
・インポテンツ
・更年期障害
・心臓神経症
・胃腸神経症
・ぼうこう神経症
・神経症
・不眠症
・自律神経失調症
・神経症的抑うつ状態
・反応性うつ病
・その他(神経性◯◯病と診断されたもの)

④治療法

  • ホルモン剤などによる対症療法(症状を抑えるため)
  • 睡眠の周期を整える行動療法
  • 処方される薬による方法
    (i)症状を抑えるための対症療法   鎮痛薬、整腸薬、睡眠薬、ホルモン剤、その他症状に合わせた薬の処方 (ii)ストレスや心の面へのアプローチ   抗うつ薬、抗不安薬など

などがあります。

一番大切なものは、ストレスのコントロールと生活習慣の改善(規則的な睡眠と食事)です。

3.自律神経を整えるには

健康的なイメージ

①一番大切なこと

交感神経が過剰に働きやすい現代のストレスフルな生活は、日常のなかでいかに工夫して、副交感神経が優位に働くような時間を持つか、ということが大切です。 生体リズムを整えるため、毎日規則正しい生活を送ることを心掛けましょう。

睡眠(睡眠時間、起床と就寝時間)食事(栄養、食事時間)を整えていきましょう。 その上で、ストレス対策をしていくことが大切です。

「睡眠」と「」を整えて「ストレス対策」をしていくことが大切

知っていてもなかなか実行できていない方が多いのではないでしょうか。 ストレス社会と言われ、自律神経失調症という言葉も多く使われるようになってきた今だからこそ、改めてその大切さを思い出していただきたいと思います。

②ストレス解消法

ストレスとうまくつき合う方法をご紹介します。(ストレス反応に気付き、解消していくこと)

・リラクセーション 心身の緊張を緩めること。呼吸法(腹式呼吸)や、ヨガなど。

・ストレッチ 長時間座りっぱなし、立ちっぱなしなど、同じ姿勢を続けていたり、仕事や人間関係などによっても、筋肉が緊張します。 定期的にストレッチをすることで、筋肉を緩め、血行を促すことで心身のリラックス効果が得られます。

・適度な運動 無理のない範囲で楽しみながら体を動かすことで、ストレス解消の手助けとなります。

・質の高い睡眠 日中眠くならず、朝の目覚めも良い、質の高い睡眠をとることが大切です。15分程度の昼寝も良いとされています。

・仲の良い人とのコミュニケーション 人と話すことで、気持ちがすっきりしたり、アドバイスをもらったり、解決策に気付けたりします。

・笑う 笑いは、自律神経のバランス調整や、免疫力を正常化させたりする効果があるといわれています。 「元気で楽しいから笑う」ことも大切ですが、「笑うことで、元気に楽しくなる」ことも大切ではないでしょうか。

・趣味を持つ 好きなことをする時間をとるということです。日常生活から離れる時間づくりは、リフレッシュに最適です。 複数のコミュニティを持つことで、ストレスの蓄積が分散されるとも言われています。 リラックスできて楽しいと思える時間や充実感を大切にしましょう。

以上はどれも大切です。そして、何より自分にあった方法をいくつか持っていることをおすすめします。 「こんな時なこれ」といったケースバイケースでの対応方法と毎日のルーティンをもつことで、ストレス管理ができるようになるためです。

もしあなたが不調で悩まれており、精神的なストレスや生活習慣の乱れを感じているのであれば、これを機に無理なく少しずつチャレンジしてみるのもよいのではないでしょうか。

〇上記に加え、気を付けるべきこと

・翌日に影響が出るストレス発散方法(生活リズムを整えることも大切です。運動や趣味もほどほどに。) ・喫煙(身体にとって決してよいとは言えず、おすすめできません。血管へのダメージも大きく、動脈硬化にも影響があります。病気のリスクを減らすためには、禁煙は必須です。) ・過度な量と習慣的な飲酒(量と頻度にはご配慮ください)

③食事で意識すること

ストレスの緩和や自律神経のコントロールに影響する成分が不足していないかチェックしてみましょう。

・ストレスで消費されるタンパク質と、タンパク質の代謝を助けるビタミンC

・脳の代謝にも必要なビタミン、ミネラル

・トリプトファンを含む物(乳製品、大豆製品、米などの穀物、バナナなど) 眠りを促す睡眠ホルモンのメラトニンや幸せホルモンといわれるセロトニンの合成に必要な成分であり、ビタミンB6も必要。
 トリプトファン → 日中はセロトニン → 夜はメラトニン となる。

・マグネシウムを含む物(豆腐や大豆などの豆類、ナッツ類、海藻類など)  副交感神経の働きを高める。血圧を下げる効果があり、心筋梗塞リスクの高い方や頭痛に悩まれている方にも重要なものの一つ。

・カルシウムを含むもの(牛乳などの乳製品、ひじき、小松菜、小魚、豆腐などの豆類など) 神経の伝達に重要な役割を果たす成分。脳神経の興奮を抑える。   よく言われる「カルシウム不足はイライラのもと」というのは俗説とされます。  体内でのカルシウムの利用効率を高めるためには、ビタミンDが必要。

・ビタミンC(パプリカ、ピーマン、ブロッコリー、レモンなど)(ストレス対策)  抗ストレスホルモンであるアドレナリン(副腎から)の生成に消費される。コラーゲンの生成や、鉄の吸収を助ける。  加熱調理によって失いやすい。炭水化物やタンパク質中心の食事では不足しがち。

・ビタミンA(鶏レバー、豚レバー、うなぎ、にんじん、ほうれん草、卵など)(自律神経のコントロール)  脂溶性ビタミンの一つ。皮膚や粘膜を健全な状態に保つ。

・ビタミンE(アーモンド、らっかせい、ひまわりオイル、オリーブオイル、モロヘイヤ、かぼちゃ、など)(自律神経のコントロール)

〇上記は、全て必要な栄養素です。普段からバランスの取れた食事を心掛けましょう。

一般的に利用される市販薬には、栄養素が不足する副作用があるものもあるため、普段から自己判断で薬をよく服用する方も注意が必要です。偏った食事を避ける、ということを覚えておきましょう。

4.まとめ

大切なことを伝えるイメージ

当たり前のようなことかもしれませんが、睡眠、食事、ストレス対策などは日頃から積み重ねです。習慣やクセなどは、良いものも悪いものも続けてしまいがちです。

社会や職場の変化、家族のかたちやコミュニケーションの変化など、インターネットをはじめとしたここ数十年における大きな変化によって、適応能力が重要な時代となりました。日常生活の中で優先されることも大きく変わったかもしれませんが、それでも必要なものや大切なものは変わりません。

大人から子どもまで、ストレス過多の時代です。ここ数年、コロナ禍によってさらに不安と緊張が加速度的に大きくなっています。

そのため、自分にあったリラックス方法やストレス発散方法を持つことが、とても大切です。それも複数もち、状況に応じて取り組みやすい方法を選べるようにしておくことがポイントです。

人間関係や仕事へのストレスに関しては、1人の時間を持つことも大切ですが、コミュニティを複数もつことで、ストレスを分散させる方法もあります。コミュニティを一か所に集中すると、そこでトラブルが起きた際に大きなストレスになるリスクがあることに注意が必要です。

楽しく笑顔で過ごすための環境や時間をつくり、ストレス対策をしましょう。 「笑うこと」による発がん物質の消失(縮小効果)も実証されているほどです。

気を張った健康対策でも、目先の楽しさだけの優先でもなく、「健康で心から笑顔で過ごす」ためのちょっと工夫を今日から取り入れてみませんか。それが習慣になり、結果的に健康な身体づくりによい影響を与えていることが理想です。そして、それはご自身の大切にされている周りの人へもよい影響を与えるはずです。

5.参考文献

複数の本や資料のイメージ

◯ホームページ

- 厚生労働省
[https://www.mhlw.go.jp/index.html] - 農林水産省
[https://www.maff.go.jp/index.html] - こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(厚生労働省)
[https://kokoro.mhlw.go.jp/] - 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト
こころの健康や病気、支援やサービスに関するウェブサイト(厚生労働省)
[https://www.mhlw.go.jp/kokoro/index.html] - e-ヘルスネット
[https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/?s=%E8%87%AA%E5%BE%8B%E7%A5%9E%E7%B5%8C] - ドクターズ・ファイル
[https://doctorsfile.jp/medication/127/] - MSDマニュアルプロフェッショナル版
[https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB] - MSDマニュアル家庭版
[https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0] - 日本医療政策機構
[https://hgpi.org/] - 東洋経済ONLINE
[https://toyokeizai.net/] - 日経メディカル
[https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/doctor/] - Medical Note
[https://medicalnote.jp/] - 総合南東北病院
[https://www.minamitohoku.or.jp/] - 医療法人 いちえ会 伊月病院
[https://www.itsuki-hp.jp/] - 医療法人社団 平成医会
[https://heisei-ikai.or.jp/] - クリニックヘルスケアテルミナ
[https://www.terumina-health.com/] - こころ×カラダ つなげる、やさしさ。健康応援サイト
[https://www.y-koseiren.jp/health_support/index.html]

◯書籍

監修 伊藤善也 発行者 永岡修一. 図解 からだのしくみ大全. 永岡書店, 2006,256p

編者 遠藤郁夫、曽根眞理枝、三宅捷太.子どもの保険Ⅰ 子どもの健康と安全を守るために.学建書院, 2013,214p